「美人画の時代」
・・・・町田市立国際版画美術館
上の写真、パンフレットから。
哥麿作「清楼七小町 玉屋内明石 うら次 しま野」。
評判の吉原遊女七人の一人。大首絵は後に触書で禁止された。
歌麿作「納涼美人図」
しどけない姿態で、ひとりくつろぐ遊女か。
黒の薄い着物に白い下着が透けて見える。どんな色摺りの仕方だろう。あるいは肉筆画かも。
私は<浮世絵>というと、哥麿、写楽、北斎の名や<春画もあるよ>ぐらいしか思い浮かばず、これまで原画もわずかしか観てなかった。
都美術館で「奇想の系譜」展を観て歌川国芳を知り、
その後、幕末から開国期にかけて浮世絵は西欧で<ジャポニスム>という日本趣味を生み、
やがてゴッホさらにクリムトまで浮世絵画風に影響を受けていたことを知って、改めて浮世絵に興味をひかれていた。
折よく町田で<美人画展>が開催されてると知り、<浮世絵はなんと言っても美人画だ>と、芹が谷公園まで散歩を兼ねて出向いた。
美術館は、1章「”美人画の時代”の系譜」から3章「わたしたちの浮世絵黄金期」まで、章節を立てて丁寧に解説している。
知識不足の私にとってありがたく、浮世絵師の作風の特徴もわかりやすい。
とりあえず、浮世絵について素人の私は、些細なこといくつかに注目した。
一つは、美人画の<おちょぼ口>。
哥麿ほか他の絵師も一様に<おちょぼ口>と<切れ長の目>が特徴的で、
江戸時代の美人の条件みたいに思えるのだが。
そうではなく、むしろ、写実よりある種の様式美によって描いてると思える。
顔立ちや姿態、衣裳にせよ、浮世絵版画の美的スタイルを表すようだ。
実は私は、<おちょぼ口>には唇だけでなく歯や舌も見えることにやっと気づいた。
あの極小さな口元から歯や舌が覗いてるなんて知らなかった!
*美術館では点眼鏡を貸してくれる。
二つ目は、<難波屋おきた>は寛政三美人の一人だが、名前が記されていない。
寛政の触書で、町娘の名は遊女と違う扱いとされたという。
しかし、絵の左上の<判じ絵>に「菜二束+矢+沖+田」の絵が描かれている。
三つ目は、浮世絵の版画制作の手順。、
カタログに掲載されていた哥麿作「難波屋おきた」の完成は、主版から八版の色摺りをするという。
彫師と摺師の腕の見せ所としても<結構大変だなぁ>と感心した。
そのほか、<紅嫌い>など、興味は尽きない。
<写真説明>
1,哥麿作「高名美人六家撰」の難波屋おきた。
やっぱり唇から歯がのぞいてるんだが。
難波屋おきた
2,哥麿作「当時三美人」。当時とは現在のこと。
左、高島おひさ。中央、富本豊ひな。右、難波屋おきた。
三美人とも、似てるようで、特徴もある。さて、だれがいいかなぁ、
<おひさ>がいいかも、二人に比べて、柔和な顔立ち。さて?
三美人
3,哥麿作「ビードロを吹く娘」
有名な作品だ。
画像
4,哥麿作「当世好物八景 はなし好」。
女は唇を抑えて笑いかけ、男の唇から歯が覗きしゃべってるようだ。
<ふるさと納税>で購入したらしい。この絵だけ写真OKAYだった。
はなし好
5,その他の画像
サムネイル
版画の完成へ
「難波屋おきた」の主版(おもはん)。これから八つの版木で色摺りされる。
主版
八版目、襟の模様。この上は襦袢の模様で六版目で色摺りされている。
八版目
九版目、髪と襟の模様。これで完成。彫師、摺師の凄い技巧が分かった。
おちょぼ口から歯と舌が覗き、<どうぞ>と言ってるのかもしれない。
完成版