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大西茅布「レクィコロス」
・・第24回「岡本太郎現代芸術賞」太郎賞
新聞記事で、太郎賞が18歳の少年(史上最年少)に贈られたと知り、
コロナ禍の中、久しぶりに川崎の岡本太郎美術館に行った。
なるほど<凄い、迫力ある>と感じ入った。
大西茅布君(17歳、出品時)の「レクィコロス」。
彼によれば、「レクイエム(鎮魂)」と「コロナウイルス」との合成語で、
「コロス」の部分が、ギリシア悲劇の「コロス(合唱)」にも通ずるし、
日本語の「殺す」にも通ずる、(作者の言葉より)と。
また、「人類の悲惨を作品化することに衝動を感じます」(同上)、と。
下、壁面の数多くのキャンバスに描かれた画像(部分)。
右の置かれた作品群。
私は素人の絵画鑑賞者としてこれまで、
画家は1枚のキャンバスに絵を描き、
作品名(主題)を付ける、と思っていた。
しかし、今回の太郎賞展の作品は、
<インスタレーション>という手法、
作品群を一つ主題にまとめて提示する手法の作品が主流だった。
インスタレーションとは、空間全体を作品とし、
鑑賞者は1点1点の作品を「鑑賞」するというより、
作品に全身を囲まれて空間全体を「体験」することになる、らしい。
<そうだったのか>、そのような作品をこれまでも観てきたはずだが、
私はその場合も1点1点を観ていたようだった。
「5メートル四方の壁面を大小さまざまなキャンパスが埋め尽くし、
さらに巨大なイーゼルにも複数の絵が掛けられ、(中略)
さまざまな人物の群像が、すさまじい圧力でこちらに迫ってくる。」
とは、審査員評だ。
確かに、作品群を間近にした空間に立つと、
作品全体から描かれた<群像の悲惨>を体験でき、
圧倒的にエネルギッシュな迫力が伝わる。
戦争・地震・津波・その他の被災・餓え・病と人類の<悲惨>はいろいろあり、
さらに現代では原発事故(人災)、そしてコロナ・・・
私は、作品群を観て、作者の悲惨を<阿鼻叫喚>と置き換えてみた。
この若き太郎賞画家の作品(部分)をいくつか観よう。
「レクィコロス」を鑑賞して私は、
大西茅布君は今後どんな作品を描くのだろうか、
底知れぬ才能を遺憾なく発揮してくれるだろうと、期待している。
岡本敏子賞
モリソン小林さん(商業美術家)の「break on through」は、
展示された他の作品よりも、私にとって一番分かりやすかった。
枠からはみ出して成長する植物群がやがて大地に根を生やす。
自然との<共生>が主題となってる、と感じた。
しかし、植物の素材が<ほぼ鉄>というのは驚かされる。
鉄で植物を造形し表現する綿密な技も、敏子賞に値すると思う。
描かれた空間全体から観ると、本当に金属なのか、驚かされる。
特別賞のなかでは、牛尾篤さん、
「大漁鯖ン魚」が好きな作品だった。
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