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   映画評



 Ⅰ)
 トマス・ハリス原作本・映画
 文庫本『ハンニバル』に引きづられて、
 フィレンツェの細部について私の旅行の記憶と
 著者の記述とをヤスリにかけていたりした。

 ただ、この小説の舞台設定にある主人公の住むカッポーニ宮は、
 残念ながら私の行かなかったアルノ川左岸にある。
 また、サンタ・クローチェ教会にも行っていない。
 主舞台の一つであるヴェッキオ宮殿の中の「百合の間」も見ていない。
 というわけで、残念ながら「無いない尽くし」でもあるが、
 今回はニャミスということ。
 トマス・ハリスが『ハンニバル』を書くのが遅すぎた。


 ところで、このトマス・ハリスは寡作家で、
 前作『羊たちの沈黙』で一躍有名になったらしい。
 映画版『羊たちの沈黙』を見て、
 私もすっかりジョディ・フォスターが気に入って、
 原作も読んだ訳であった。
 「人食いハンニバル」。
 ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)の登場は、
 前前作の『レッド・ドラゴン』から。
  *)ウイリアム・ブレイクの詩集をテーマとした作品。
 ハリスの第1作には『ブラック・サンディー』がある。
  *)パレスチナゲリラの工作活動を描く。

 というわけで、トマス・ハリスはこれまで
 都合4著作しか出版していない。

 レクター博士という、魅力的に造型された(?)精神科医
 かつ精神異常者である人物を中心におきながら、
 『ハンニバル』では
 フィレンツェというイタリア・ルネサンスの文化への造詣を
 知的装飾として、
 クラリス・スターリング(FBI捜査官)との
 謎めいた交感を主軸に据えた作品となっている。

 こうした寡作家が、練りに練りあげた作品を読み、
 かつ映画を見るのは、<読みごたえ><見ごたえ>がある。


 Ⅱ)
 女優編
 グウィネス・パルトロウがいい。
 <ミステリアス、なのに可憐。その微笑にノックアウト>
 とはPRの文句だが、なるほど、確かにそう。
 すごい美女というのでもないが、
 しかし、さまざまな感情を表す時の
 顔のさまざまな表情がいい。
 なんとはなしに、テレビチャンネルを回していて、
 つい引き込まれて、「スライディング・ドア」をみた。
 それと、「大いなる遺産」を立て続けに見てしまった。

 「スライディング・ドア」は、
 地下鉄に乗り遅れたかどうかで、
 主人公のその後の道行きが変化する。
 間に合った彼女は、アパートに帰ると恋人が
 他の女とベットシーンを演じる現場に出くわし、
 現場から飛び出す。
 やがて地下鉄車内で声をかけられた男と再会し、
 恋におちる。

 他方、乗り遅れた彼女は、
 現場を見ずにそのまま恋人との生活をしているが、
 やがて恋人の浮気を知る。
 最後のシーンは、交通事故にあった二人の彼女、
 間に合った彼女が死に、乗り遅れた彼女が生き残る。
 生き残った彼女は恋人と別れ、
 死んだ彼女の恋人に
 エレベーターの中で話しかけれる。


 「大いなる遺産」も見てしまった。
 この映画はディケンズの作品をアメリカに移したもの。
 新進画家として成功した青年との謎めいた恋の物語。
 青年は画家として成功をかちえることで、
 彼女との恋を実らせたかったが、
 彼女は他の男と結婚してしまう。

 古い屋敷への執念を間に挟み、
 やがて、彼らは再会を果たす。
 他に、「沈黙のジェラシー」や、
  *)結婚するが、子離れしない義母、
   やがて義母の恐るべき本性がわかるという話し。
 「セブン」、「ダイヤルM」、
 「恋におちたシェイクスピア」がある。
  是非見なくてはなるまい。


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