「ワヤン・クリ」 ・・・・「ノロヨノの結婚」
グループ<スミリール(そよ風)> による
東京国立博物館で9月21日、私はインドネシアの独特な影絵芝居を幸運にも観ることができた。
あの特異な姿をした人形を使って芝居がどう演じられるか、とても興味深いものがあった。
もともと、<ワヤン・クリの影絵芝居>はインドの叙事詩「マハーバーラタ」を原作とし、
インドネシアの風土で解釈し直されたそうで、
「ノロヨノの結婚」は、主人公ノロヨノ(後のアルジュノ、インド名クリシュナ)が
戦争のさなか愛するルクミニ王女(バヌワティ)と結ばれるまでの苦難の物語になっている。
上の写真:ノヨロノ王子とルクミニ王女。
物語の主人公ノロヨノ王子(アルジュノ)とヒロインのルクミニ王女(バヌワティ)。
二人の運命は?
アルジュノ
バヌワティ
スリカンディ 女戦士、アルジュノの第2夫人だが戦死してしまう。
影絵芝居のワヤンは影を、クリは皮を意味するそうで、
人形は水牛の皮をなめして切り取り、透かし彫りをして、極彩色に塗る。
人形は姿・形・衣装もそれぞれ独特で、この人形は<アルジュノだ>と分かるようだ。
人形制作中 友人がインドネシアで撮ったもの。
人形完成
芝居は、白布のスクリーンを張ってその裏から石油ランプを照らし、
その間にダランという人形遣いが座って人形を操る。
ダランは一人で語りながらいろいろな人形をスクリーンに映して、自在に操る。
ダランによる操作 スクリーン裏、人形そのほか色彩豊かな道具。
観客は石油ランプやスクリーンの反対側から人形の動きを鑑賞する。
そのために、人形の黒い影を見ることになるが、
ほんのりと彩色が、透かし彫りもシルエットになって現れる。
初めて観た私の印象は、<どうにも不思議な芝居だなぁ>と。
普通、芝居では観客席に向かって舞台で役者(ここでは人形)が演じるのだが、
舞台はスクリーンの裏側にある。<だから影絵芝居なんだ>と後で納得したけれど。
観客はスクリーンの表と裏を自由に行き来できる。
裏でダランが人形を自在に操る仕草、
ガムランという楽器を演奏する人たち(今日は8人)の演奏振りを見て楽しむことができる。
なるほど、影絵芝居とは<こういうものなんだ>と。
ガムラン A~Mの13種類
*今日のダランはスミヤントさん、グループの主宰者でした。
上の写真: スミヤントさんと奥さん
最高神ブトロ・グル。
インドのシヴァ神にあたり、聖牛の背に乗る。
下界の人間たちの悲喜劇は、彼と神々が仕組んだもの。
プトロ・グル
<コメント>
①ある人
随分前に、バリで見た記憶があるのですが、
人形一体づつが、精巧に美しく作られたアートであることに改めて感動しました!
ご丁寧な解説を有難うございます‼️
②私
きらびやかなスクリーンの裏の世界に比べて、
人形の黒い影を見る世界(この世)という思想があるらしい。
プラトンの「洞窟の比喩」を想起した。
また、最近、映画「利休にたずねよ」を見ていたら、
二羽の小鳥の舞う影絵を、掛け軸に描かれた松の枝に映し出すシーンがあった。
小鳥を動かすと枝に止まってるようにも見える。
影絵にはこういう楽しみもあったと気づいた。