真似ゑもん(其の二)
・・・鈴木春信
<第十二図から第二十四図>
江戸からあちこち<情交の現場>を見て回った真似ゑもんは、江戸・遊郭吉原にやって来た。
吉原では、さてどんな<色模様>が描かれるのか。
初めの第十二図。花の吉原、出合茶屋。桜から春三月。
左が花魁、頭巾姿が客、客が裾に手を入れている娘は<振袖新造>。
振袖新造とは、花魁の付き人で見習い中らしい。
吉原では、客が振袖新造に手を出すことも多かったらしい。
さて、真似ゑもんは何処にいるんだろう。
振袖新造の書入れ「アレ志がはらさん 路考さんがいつそもうなりんせん 人がみんす」とある。
<志がはら(しがはら)>が花魁の名、<路考>が客の名。
路考は、当時第一の人気役者、女形の二代目瀬川菊之丞の俳号。
春信の見立で、第五図の平賀源内も同様だった。
下の第十六図
吉原では、花魁と客は、一会、二会、三会と逢い、此の三会で馴染となる。
花魁の馴染み客ともなると、事後の世話を花魁がしてくれる。
手慣れた様子で、枕紙で花魁が拭き、客も枕絵をつかむ。
真似ゑもんは二人の様子を見ながら、もう一戦かなアと。
なお、敷き布団の三枚重ねは上位の花魁を表すらしい。
第二十三図。エクスタシーの二人。
上の題句「からまるるほど心よし 蔦の屋ど」
遊女は客をしっかり両手両足で抱きしめ、目を閉じて忘我の境地にある。
書入れは、遊女「ハアモヲシ それエヽどうしやふ」 客「アヽ かわいい」と。
春信は、この図で二人が無心に交わっている姿を描き、真似ゑもんの色道修行を終わらせる。
*なお、画像の汚れは原画のもの。現存する浮世絵では、こうした汚れは良好な方だ。
最後の第二十四図。
修行を終えた真似ゑもんは、頭巾を被った武士の姿となっているが、これからどうする?
妓楼の門口で、立位の情交を行ってるのは遊女と間夫か。
遊女が客ではない男とするのは遊郭ではあり得ない。それだけ遊女は心を込めているのだろう。
左は遊女を迎えに来た男衆。黒頭巾の間夫は真似ゑもんを迎えに来た?
以下、他の画像はサムネイル形式で。
上左から
十三図 初会の図。初めて客となる。花魁の部屋の華やかな調度品が見渡せる。
二枚重ねの敷き布団の上で客はちょっと緊張か。
花魁が懐手で「たばこ あがりんし」と吸付け煙管を差し出し、客の気をほぐす。
十四図 二会の図。客も大分慣れた様子。襖の外で眠ってるのは、花魁付きの禿。
十五図 三会の図。客はもう馴染、仮の夫婦とも。仲睦まじく手紙を二人して手紙を読む。
障子の外で励んでる二人は、<寝ずの番>の男と振袖新造。花魁は気にしてない。
十七図 提灯を持つ男は引手茶屋の男衆。遊女に男衆が手を出すことは<ご法度>だが。
暖簾の陰から同輩の遊女が二人を見とがめる。さてどうなるか。
十八図 遊女は、あちこち他の客との<廻し>があって、やっとこの部屋に来たようだ。
この客は待ちくたびれ、振袖新造もぐっすり眠ってる。
十九図 この花魁も廻って来たようだ。馴染み客はその間の振袖新造にちょっかいを出した。
花魁の名代・振袖新造に手出しはご法度だが、間々あるようで、花魁は気にしない。
二十図 この図では振袖新造に客が無理やりマラを握らせようと。客「サアここでちよつと」
花魁は暖簾の陰から覗き、客の股間に長煙管を突き出している。
二十一図 別の遊女に手出しするのもご法度だが、<張見世>のため化粧する遊女と戯れる。
馴染の遊女が浮気心を発揮した客に長煙管で打ちかかる。
「又こゝへきていちやつきなんす」と。
二十二図 裸の客と遊女が三味線を弾く。しかも大きなマラで三味線の胴を打つ。
男「どうだ~ こいつをぬつと入れたらよかろ」
遊女「ナア 寝なんし はやく入れたい」