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ついの雛形
・・・絵:葛飾応為 詞書:渓斎英泉
春画版画は、幕府の禁制により、
いわば<地下出版>の状況が再三あり、
絵師も<陰号>を使ったようだ。
北斎は「紫色雁高」という陰号を用いていたので、
この艶本が北斎作とされていた。
実は、渓斎英泉にこの陰号が譲られたという。
渓斎英泉と北斎・応為父娘は、
画業を通じて親交があったことが分かる。
下図、フォトモーションにしたが、読めるかどうか(難しい)。
上の二人は書入れから、養子と養母のようだ。
右から
養子「おつかさん わたしも もふきがさんじます
ごめんなさいまし フンフン」
*この後の書入れでは、人が来たようだ、早くしてと養母に願う。
養母「・・たとへしんだほとけがいきかへつておいでなさつても
二ばんでどふまアやめられるものか
こなたアやう母だとおもつておれをばかにさつしやるか・・」
*養母は兎に角自分の好きなことをあれこれ養子にやらせて楽しもうする。
養母「アヽもふくちがきいていられねへ
それもふいくからきつくつきな アアいゝ
この子ハほんに孝行ものだ
フンフンアレよこしをかゝひあげてきつくといふにフンフン」
どうやら昼日中二人は人目を避けて情事に励んでいる。
*この図は、若後家が<男妾目的>で養子を迎えるという図柄。
下図はユニークか、書入れの台詞は何と<猫>のもの。
なお、団扇に「弁慶と小町は馬鹿だなあ かゝあ」と川柳が書かれている。
*二人は童貞と処女のままだったから。
猫は、夫婦の営みを見やりながら、
自分の目の形が変わるのと同じく、人間の目も変わると呟く。
<五八卵、六つ丸く、九つ針>と猫の目が時を告げるというが、
営みで女房の目が変わる。
「・・こゝのやどろくがこう
こなたちよつとおきさつせ~とゆりおこして
おへきつたゑてものをにぎらせると
かゝあがめをさまして目をまん丸くしやがつて
それからいれて二ツ三ツつつかれると
すこしほそめてたまごのようニなつて
なにがアアいゝ わたしハいくよ あれさ~と
ぬかすときハめをはりのやうニするやつさ
九ツやつたしるしかしらん・・」
猫は、亭主が女房をとる、自分はねずミをとろうかと。
ねずミもよがりごゑをあげてやっていて、
「にやンのおもしろくもねへ」と。
下図は「ついの雛形」の最後の図で、右に詞書がある。
「見開者大開 仕開小開 操開者毛開」 紫色雁高書。
*署名は北斎と英泉の陰号。上の文意は言わずもがな。
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