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  第8報・9報・補遺


 第8報 2001・11・13
 北部同盟軍、カブール制圧
 ニューヨークで再び航空機墜落

 朝、職場への途中、スポーツ紙やらでまた何かきな臭い記事が
 踊っているようだと見ながら、
 早速、職場で知ったのは
 ニューヨークの飛行機事故(テロかどうかの問題)。
 さらに、職場から帰って夕刊紙には、
 <首都カブール陥落>のニュース。
 さらに別件で、職場の問題でTELが入った。

 北部同盟軍によるカブール制圧については、
 ブッシュjr大統領と
 パキスタン・ムシャラフ大統領の会談で、
 北部同盟に自制を求めるサインが出ていたはずなのに、
 どうしたの?。
 米政府にも、国務省サイドと
 国防省サイドとの思惑が結構違うという報道もあった。
 北部同盟軍によるカブール制圧は、
 ブッシュjrと国務省の意向に反して行われた。
 あるいは、
 「既成事実をつくる」という軍部の独走であったのか?
 (かつての日本では、<関東軍の独走>を
  止められなかったと同様)


 第9報 2001・11・18

 急転直下
 軍事は政治より強し。
 戦時には軍事優先が当たり前?。
 かくして、軍部独走は止められない。

 マザリシャリフ制圧、
 カブール制圧へと北部同盟軍各勢力の先陣争いがあり、
 米国防省はこれを容認?。
 戦場の<嚇嚇たる戦果>を誰が否定しよう
 ダメといったら<総すかんを食う>ことになる。
 かくして、ブッシュjrもムシャラフも容認?
 後は、タリバン政権後の
 「国際社会によるアフガニスタン政権構想」を具体化するだけ。
 という印象を現時点で私は持つのだが。

 しかし、この政権構想も
 紆余曲折が予想されているようだ。
 「戦勝は我にあり」と北部同盟の各派勢力は
 自己の取り分を主張するであろうし、
 特に、利害対立が起これば、
 パシュトーン人への敵意をむき出しにするのではないか。
 北部同盟側は、とりあえず今は、
 彼らの中の多数派・タジク人勢力、
 ムジャヒディン連合政権時の前大統領ラバニ
 暗殺されたマスード将軍に代わる
 ファヒーム国防相を中心に結束しているようだ。
 そして、当面、パシュトーン人勢力を排除した
 政権の実現をめざしているようだ。


 他方、拠点カンダハルに向けて撤退した
 タリバン政権軍の後を追うように、
 雨後の竹の子のごとくあらわれた
 反タリバンのパシュトーン人の各派勢力
 彼らの多くは例のムジャヒディン連合政権に参加、
 内部抗争・分裂の果て、タリバン台頭により
 指導者がパキスタンに逃れていた勢力で、
 最近ではザヒル・シャー元国王の復帰にすり寄っている。

 または、カブール陥落後、
 カブールの東部からタリバンが撤退すると、
 空白を埋めるように
 東部の拠点都市ジャララバード親タリバン派が進出したという。

 いずれにしても、
 彼らはタリバン後の政権の担い手、
 アフガンの民族多数派だから、
 当然、彼らを抜きにしては政権構想もあったものではない。
 したがって、政権の中枢を握ることを主張するだろう。
 かくしてタリバン後のアフガニスタン情勢は、
 かつてのムジャヒディン連合政権の<二の舞>にならないか。


 タリバンは?
 私は、第7報の最後に、
 タリバン軍の複雑な構成、
 それだけに分解も早いか、と記述した。
 また、各種の報道による「タリバンの戦略的撤退」については、
 タリバン側の<大本営発表>と私は見 なしていた。

 戦線建て直しための撤退・<転進>もあるだろうが、
 むしろ、部族的(サムライ的)軍隊の層が瓦解した結果、
 敗走せざるを得ないという事態があったのではないか。
 米軍による非人道的なハイテク兵器の脅威や、
 (私のイメージでは、湾岸戦争時の逃げまどうい
  <しかも死を逃れられなかった>イラク兵の姿と
  いつも重なるのだが)
 戦車等のロシアの武器で
 かなり補強された北部同盟軍の姿・火力に曝されて、
 サムライ的に言えば「割に合わない戦闘を避ける」のは当然。
 しかも、戦線から離脱するのが遅ければ、
 北部同盟の将兵による処刑の脅威もある。

 タリバン軍とは、その実態は、
 結局、オマル師を信奉する原理主義者
 ビンラディンのアルカイダの軍事組織であった?
 これだけではせいぜい数万人規模で、
 現在では多く見積っても3万ぐらいらしい?。
 報道によれば、
 オマル師が「羊のごとく逃げるな、徹底抗戦せよ」と
 檄をとばしたという。
 また、「都市はいらない、山岳がある」と
 <ゲリラ戦をやる決意>を示したという。
 こうした言明が、この間の事情を物語っているようだ。

 また、かつてのパシュトーン人系のムジャヒディンが、
 タリバン側の<ジハード>の呼びかけに呼応して
 パキスタン国境を越えてアフガニスタンに入った。
 その数1万人、結局彼らは、戦局の急転直下に追いつけず、
 パキスタンに戻っているという。
 タリバン側でも、彼らを再訓練して
 米軍に対する戦闘能力を持つようにはできなかった。
 彼らの間にも戦死した人々が数百人いるというが、
 多くは疲れ切って帰国したらしい、
 彼らはまさに純粋に「ジハード」のために参戦したのだったが。

 いずれにしても、オマル師やビンラディンは、
 米軍特殊部隊に捕獲されるよりは死を選ぶであろうが、
 彼らの指揮下に、
 どのぐらい<山岳を拠点としたゲリラ戦>を
 戦い抜く戦闘員がいるかどうか、
 このことにタリバンの命運が懸かっている。
 と同時に、
 今後のアフガニスタンの混迷の度合いが測られると思われる。


 続報
 16日、アフガニスタンは、
 ラマダーン(断食月)に入った。
 しかし相変わらず、戦火はやまない。
 17日夕、帰宅してA紙夕刊を見ると、
 「カンダハル放棄へ」と第一面の大活字が目に入った。
 次いで地元指導者に本拠明け渡し「山岳に潜む」と。
 (これはアフガン・イスラム通信(AIP)情報で、
  AIPはタリバン寄り通信)
 この情報は、上記に記したように、
 私の予想通りのタリバンの動きであった。
 しかし、カンダハル明け渡しを
 地元指導者2人にという記事は、目新しい。
 パシュトーン系の反ソ・ムジャヒディンであった、
 バシェル氏とナキブラ氏という。

 ナキブラ氏は、
 例の前大統領ラバニの所属する「イスラム協会」の幹部で。
 (イスラム教宗派の一つ)
 ラバニ政権時代の94年にカンダハル地区の司令官であったという。
 また、
 バシェル氏は「イスラム党ハリス派」に属し、
 以前はカンダハル市の最高幹部であったという。
 また、イスラム党ハリス派は、
 タリバンがカブールから撤退し、
 ジャララバードを中心とする東部地域を
 明け渡した相手でもある。
 また、「イスラム党」には
 かつてオマル師も所属していたという。
 
 こうしてみると、オマル師は、
 親タリバン派のパシュトーン人部族指導者と提携して、
 カンダハルへの北部同盟軍の進撃を許さないという
 パシュトーン人諸部族間の合意を取り付けたようだ。
 もともと、オマル師はカンダハルの一宗教指導者にすぎなかった。
 タリバン(神学校学生、単数形タリーブ)が彼のもとに結集して、
 アフガニスタン内戦を終結する力を持ったのであった。
 ビンラディンとの結びつきが、
 オマル師をいっそう強力に仕立てたのであったが。

 カンダハルは、最近知ったのだが、
 かのアレクサンドロス大王の東征の際に、
 彼の名を冠したアレクサンドリアがここに築かれたという。
 アレクサンドロスのxandorosが転訛して
 カンダハルQandaharとなったという。
 歴史的に由緒正しい町のようだ。
 そして、
 イラン系のパシュトーン人にとっても大事な町であるらしい。
 もともとアフガニスタンとは、
 ペルシャ語で「アフガン人の国」
 <アフガン=「山の民」>であって、
 自称は「パシュトーン」(パシュートン)。
 したがって、本来は
 「パシュトーン人の国」の意味のようだ。
 自然地理的には、
 ヒンドゥークシ山脈が東北方から中央部に走り、
 北部との南部を分けている。
 (アフガニスタン南部からパキスタンにかけて
  パシュトーン人が多く住む)


 タジク人やウズベク人を除くと、
 バーミャンを中心とした山岳地帯に
 少数民族としてハザラ人がいる
 彼らは、モンゴル系でイスラム教シーア派といわれるが、
 (イランの北部同盟支持の理由ともなっているようだが)
 彼らこそパシュトーン人の国の少数民族として
 歴史的に幾多の差別・迫害を受けて来た。

 今日のアフガニスタンは結局、
 歴史的・人為的に国境を線引きされて成立し、
 (ロシアの南下の圧力とイギリスの統治に狭間にあって)
 戦争となると民族対立に引き裂かれてしまう。
 このことは、
 米ソ冷戦後の旧ユーゴなどの民族紛争多発の背景
 にあるものと同様で、
 民族間の抗争と
 その犠牲となる「無辜の民」という構図を持つ。
 21世紀の<非対称的戦争>というマスメディアの論調は虚しい。
 何も変わっていないのだ。


 18日
 タリバン政権崩壊
 オマル師とオサマ・ビンラディン氏の命運は尽きたのか?。
 今後、どんな展開になるか予想もつかないが、
 とりあえず、この特集1をここで終了しよう
 歴史は過去の事実を読むことばかりでなく、
 現に動いている<動き>を読みとることも大事。
 この特集のなかで、
 私も少しは<現に動きつつある>歴史を読みとろうとしたが、
 うまくいったかどうか。


 === 了 ===



 <補遺>  2002・1・3

 意外にあっけないタリバーン政権の崩壊により、
 (指摘しておいたようにタリバーン政権の持つ
  三重構造の結果か?)
 世界帝国・合衆国の
 「国際テロキャンペーン」のターゲットとしての
 タリバーン最高指導者・オマル師や、
 アルカイダ指導者・オサマ・ビンラディン師の命運も
 尽きたようだ。

 日本時間2002年1月3日午前10時半現在、
 今だに、オマル師やビンラディン師の
 米軍による捕捉が実現していない。
 国際報道によっても、彼らが逃げ惑っているとは思われない。
 彼らは、自分の死の時を知ったならば、
 「自爆」する覚悟があると思う。
 そうすることによって、
 イスラム世界で「殉教者」となるはずだから。
 オマルやビンラディンに続く
 「殉教者」がムスリムからあらわれる。

 2001年9月11日の「同時多発テロ」の首謀者が
 ビンラディンだ、というならば、
 彼の生死に関わらず「WANTED]と
 西部劇まがいの<懸賞金付きお尋ね者>とした
 大統領ブッシュjrの威信をかけて、
 ビンラディンをすでに捕捉していてもおかしくない。

 オマル師やビンラディンを、
 タリバーン崩壊後の1ヶ月余り経った現在なお、
 何故捕捉ないし殺害できないのか?


 <仮想。謀略説
 米軍はすでにオマル師やビンラディンの所在を
 突きとめいつでも捕捉ないし殺害できる。
 しかし、米政府の戦略、
 アフガニスタンの政治状況の推移によっては
 いつでも介入できる態勢を保持するために、
 軍事的プレザンスは欠かせない。
 いつでも彼らの殺害は可能だが、
 (捕捉できない、もしくは捕捉しない)
 アフガンでの米政府の圧倒的な影響力を
 保持する必要がある。
 今、米軍の撤収は考えられない。
 同時に、米国経済の悪化の見通しから
 国内向けには、
 <まだ、戦争が終わらない>というキャンペーンにより、
 大統領ブッシュjr及び米政府への支持を
 引き留める必要がある。


 また、今となっては
 どうも忘れ去られたきらいがあるのは、
 米国内での炭素菌騒動
 「同時多発テロ」後、テロ第2弾として
 炭素菌汚染が米国内の恐怖を高めたようだ。
 実際、米国ニュースを見ると人々は、
 群衆で賑わう映画館などに行かなくなった、と言う。
 米国の需要冷え込みはこちらの方が影響大きいのでは?

 この炭素菌については、「培養株」の特定が行われてきた。
 国際的にはイラクの生化学兵器用やロシアのそれが指摘され、
 米国内では反体制的組織が話題になった。
 (右翼のミリシアや、名も知れぬもの個人や組織)

 最近では、何と<米軍株>が
 ニュースとして配信された。
 米軍の生化学兵器研究、
 公的には兵器開発は中止。
 しかし研究は継続していることから
 培養された<炭素菌株>という。
 こうした米軍施設に関係した人物に対する
 捜索が行われているらしい。
 だがそうなると、あくまで憶測になるのだが、
 ハリウッド映画のような展開も考えられる。
 つまり、米軍ないし米国諜報機関による自作自演か?。

 同時多発テロの衝撃を受けた米国民は、
 さらなる炭素菌汚染による恐怖を味わい、
 (これは、ニューヨークばかりでなく、全米の都市に波及する)
 (この間、米政府は「テロ警戒情報」を数度流していた)
 米国民の神経を逆なでした。
 要するに、「自作自演」説は、
 米政府の情報操作に従って
 米国民がブッシュjr大統領流の「聖戦」を
 熱狂的に支持する態勢を確固とする手段であった、
 ということになる。
 炭素菌の犯人捕捉と、
 オマル師やビンラディンの捕捉のどちらが難しい?。
 やはり米国内の方が難しい?。

 炭素菌騒動は、実際、日本国内でもあった。
 日本本土・ヤマトーンチュウでは知られていないが、
 沖縄・琉球(ウチナーンチュウ)において。
 琉球新報によれば、
 沖縄の郵便局では本土からの支援を待たずに、
 配送業務局員に対する<汚染防御>を行っていた。
 また、琉球大など図書館に<汚染郵便物らしきもの>があり、
 図書館閉鎖を行ったという。
 (その後、汚染なしと分かった)
 米軍の軍事戦略上重要な基地の島・沖縄では、
 同時多発テロ以後観光客の激減に悩まされてきた。
 
 オマル師やビンラディン氏が、
 もしかりにこのまま健在であるならば、
 タリバン勢力やアルカイダが再結集をはかり
 ゲリラ戦を挑んでくる可能性もある。
 ブラックリストに載せられたアルカイダの主要幹部も
 ほとんど逮捕・死亡確認がされていない。
 そうなると、再び、ソ連侵攻とゲリラ戦の時代が
 再現する可能性がないといえない
 アフガニスタン国民にとっては悪夢の再現となる。
 そうならないように祈るばかりだ。



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