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ヒンドゥー教
1)ヒンドゥー教の成立
ア)グプタ朝時代(4C~6C)に、
ヴェーダ的理念による集権的国家体制(王権の絶対化)、
文化的にはバラモン教法典の整備が行われ、ヒンドゥー教が成立。
ヒンドゥー教は論理学・認識論・形而上学・救済論を備えた
哲学・神学大系や厳格な身分秩序(ヴァルナ制)および詳細な生活規定とをもって、
その後のインド社会と精神文化を今日に至るまで有形無形に、
幾重にもわたって律していくことになった。
また、ヒンドゥー教は、バラモン教を基礎に、
自然・呪物崇拝、民間伝承、俗信などを信仰体系に取り込む。
シヴァ神やヴィシュヌ神を最高神に近づける。
さらに、仏教美術から着想をくみながら
生命観と躍動感のあふれる神々の浮き彫りなどの美術や、
ヒンドゥー寺院建設が活発化した。
2)バクティ運動
この間に、「バクティ」(神への献身的な帰依心情)がおこる。
ブラフマン=アートマンについての明知(ヴィディヤー)や、
ヴェーダの祭式によらなくとも、
熱烈な帰依の心をもって神を愛し念じれば、
救済がもたらされるするものである。
聖典に通暁し、知覚や感官を対象から遠ざけて自己に没入し、
絶対者を想念する従来の方法から、
情緒や感覚を総動員して一心に最高神を愛し、
「神の恩寵」(プラサーダ)を得ようとする。
バクティは神(絶対者)と人間(我)との別異性に立つもので、
ヴィシュヌ派の思想に近いが、
一元論的なシヴァ派や哲学的な一元論者を巻き込んで、
ヒンドゥー教を貫く支配的潮流となる。
バクティの観念は、
ウパニシャッドや『バガヴァッド・ギーター』にすでに見いだされるが、
宗教史の表面に現れるのは、
7C南インド・タミル地方の宗教詩人(アールヴァール)たちの活動であった。
これ以降、バクティ運動は、16Cまでにはインド全域に普及する。
その際、サンスクリット語によらず、
タミル語など各地方の固有の言語で書かれたバクティ文学運動となって、
各地方の言語、文化の確立に寄与した。
こうして、バクティ運動が大衆的な運動になるにつれて、
仏教やジャイナ教の影響力は衰え、
むしろヒンドゥー教に吸収されていった
3)バクティ運動の影響は、
また、イスラム教の神秘主義(スーフィズム)思想とも類似し、
インドのイスラム教を特徴づけた。
イスラム教のスーフィズムでは、
「スーフィー」と称する聖者たちは、
世俗的な自己を放棄して真の実在である神との合一を求め、
集団生活を送りながら修行に明け暮れた。
そこでは、神と人との関係を男女の愛にたとえるなど
バクティ的ヒンドゥー教と類似した性格を持ち、
民衆的な治癒信仰や呪力信仰と結びついて
低カーストの民衆の間に広く浸透し、
特に西北インドにおけるイスラム教の勢力を伸ばした。
イスラム教の影響下からヒンドゥー改革運動として、
ナーナクが興した「シク教」(ゴールデン・テンプル事件で知られる)が現存する。
ナーナクは、カースト差別を否定し、
酒・タバコや無益な苦行を禁止し、清浄な生活を説いた。
また、偶像崇拝を否定し、唯一神への帰依を強調した。
3)ヒンドゥー教とカースト制度
カーストは、もともと、アーリア人(「アーリヤ」は「高貴な人々」)が、
肌の黒い鼻も低い先住民を「ダーサ」(もしくは「ダスユ」)と呼び、
差別したことから始まる。
上記のシク教その他のヒンドゥー改革運動の多くが、
カースト差別の否定を唱え実行したが、
依然として現代インドの問題となっている。
特に不可触賤民(アウト・カースト)として差別される人々は、
現在の人口の15%にのぼる。
カーストについては
すでに『リグ・ヴェーダ』の「プルシャ賛歌(スークタ)」で、
千頭・千眼・千足の巨人。
この原人プルシャを神々が犠牲獣として祭祀を行い、
その身体の各部分から世界が発生した、と詠われいる。
4「種姓」(ヴァルナ)は、
プルシャの口からブラーフマナ(バラモン婆羅門)が、
腕からラージャニヤ(クシャトリヤ)が、
腿からヴァイシャが、
足からシュードラが生まれたという。
カースト制度については、
マハトマ・ガンジーでさえも、
これを社会の成員相互の協力関係をもとにした
一つの有機的・統合的な秩序とみなし、
身分差別でなくインド社会の伝統的身分制度として
擁護する見解を持っていた。
カースト制度の問題は、
インド社会の多様性・複雑性を視野に入れて考えるならば、
アメリカ合衆国の現実の差別と同様、
解決の困難なものとなっている。
<参考>
聖典類の成立・編纂の完了
聖仙が著したもの「スムリティ」(聖伝文学)とされ、
「シュルティ」(天啓文学)に次いで権威あるものとされた。
2大叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』、
「ダルマ・シャーストラ」(古法典)の
『マヌ法典』や『ヤージュニャヴァルキヤ法典』、
主要なプラーナ(古譚)文献の編纂なされる。
ダルマ・シャーストラ文献は、ヒンドゥー教徒に生活の指針を与えるもの。
各ヴァルナの義務や職業、通過儀礼(サンスカーラ)、行動様式が
バラモン中心主義的な見地から事細かく規定され、
違反した場合の罰則、浄化儀礼、贖罪法なども定める。
ヴァルナごとの内婚の規定も徹底。
また、「四住期」(アーシュラマ)と呼ばれる
「再生族」(ドヴィジャ)の男子成員が歩む人生モデルも示す。
人生は全体としてブラフマン(梵)の探求に向けられ、
ヴェーダの学習にいそしむ少年期(梵行期)、
家庭生活の時期(家住期)家業を離れ森で暮らす時期(林棲期)、
遍歴して解脱を求める時期(遊行期)の4段階を示す。
再生族とは上位3ヴァルナの総称。
母胎から生まれたあと、
一定の年齢に達したときに師について「入門式」(ウパナヤナ)を受け
「聖紐」(ヤジュニョーパヴィータ)を得る。
これが第2の誕生で、再生族の意味。
シュードラ階級は「一生族」(エーカジャ)と呼ばれ差別された。
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