<九尾の狐>
韓流ドラマ「王の女」を視聴してると、
ヒロインのケトン(キム尚宮)が<クミホ(九尾のキツネ)>と宮中内外で噂されること、
それは愛人の光海君(クアンへグン)を王座に座らせた妖女だから・・・と。
ケトンとクアンへ
ここから私は<九尾の狐>について興味を持った。
<九尾狐>の伝承は日本にも伝わり、
鳥羽上皇に寵愛された<玉藻前>、彼女が九尾狐であり、
九尾狐とは美しい女の姿に化身して男をたぶらかすという。
玉藻前① ・・「今昔画図続百鬼」鳥山石燕作
玉藻前② ・・「東錦中也競」楊州周延作
上は、歌川国芳作「斑足王と九尾の狐」。華陽夫人に化身した九尾狐が正体を現した。
江戸時代には盛んに玉藻前伝承が葛飾北斎や歌川国芳などの浮世絵や戯作文芸で描かれたらしく、
宝井馬琴の「南総里見八犬伝」にも登場する。
ただし、八犬伝では妖女ではなく、<政木狐>として千人の命を救った狐という。
葛飾北斎作『三国妖狐伝 第一斑足王ごてんのだん』
玉藻前の前身である天竺の華陽夫人が九尾の狐の正体を現し逃走する図
華陽夫人逃走
また、月岡芳年の「和漢百物語 華陽夫人」
斑足王をそそのかして千人の生首採ろうとした。生首を冷ややかな眼差しで眺める。
華陽夫人と生首
もともと、中国では<九尾狐>は古くは聖獣であったが、
やがて妖獣とされた(馬琴は聖獣説をとった)。
「山海経」より
征伐された玉藻前は、巨大な毒石に変化し、近づく人間や動物等の命を奪うようになったという。
上、月岡芳年「新形三十六怪撰 奈須野原殺生石之図」。玉藻前が殺生石に寄りかかってる。
那須塩原駅前には、九尾の狐の石像があります。
石像
日本各地の温泉地にある<殺生石>は玉藻前伝承にも由来するようです。
殺生岩の例
なお、<斑足王>とは、インド(天竺)の伝説上の王。
父王と牝獅子とが交わって生まれ、足にまだらがあることからこの名がある。
羅刹となって千人の王の首を得ようとするが、千人目の普明王によって悔悟し、
出家したという。斑足太子とも。
浮世絵に描かれる<魁夷絵>としては、安達が原の<黒塚>伝承がある。
安達が原へのリンク