宮廷女官・キム尚宮
       ・・・<光海君とキム尚宮>③
 パク・ソニョン演じるキム尚宮(ケトン)とは別に、
 このドラマでは何とイ・ヨンエがキム尚宮を演じている。
 イ・ヨンエといえば「チャングムの誓い」だが、彼女の時代劇初出演ドラマがこれという。
 チャングムの印象が強いイ・ヨンエが、
 このドラマでは、キム尚宮という光海君のために<策士振り>を発揮する女官を
 どう演じるのか興味深いので、見始めた。
 

 上、左が下級女官のケトン。右が尚宮のケシ(ゲシとも)。もちろん、イ・ヨンエ。
 物語は、ケトンの誕生、僧院で育てられる経過をたどる。
 賤しい下女から出生したケトンは、僧院に預けられ、兄のようなウォンピヨと共に育つ。
 ウォンピヨは、ケトンを将来自分の嫁さんにするんだと思っている。
 ケトンの子役 :名前不詳、10歳でケトンは女官になった。
 ウォンピヨの子役 :チョン・テウ。常にケトンのことが頭から離れない。
 ケトンの母 :ヤン・グムソク。
         ドラマ「テジョヨン」では、則天武后役で女帝の貫禄十分だった。
 ムブル和尚 :ケトンとウォンピヨを育て、二人の将来を心配する。武術の達人でもある。
 僧院にお参りに来た両班の娘、ウナを知る。ウナは奇しくもケトンと<同日・同時刻>に産まれた。
 ウナのように綺麗な着物を着られるように、ケトンは女官になりたいと、尚宮一行に頼む。
 下級女官になったケトンは、ある時、世子の光海君に出会い助けられ、
 光海君を慕うようになる。
 光海君が妻を迎えるが、ケトンとの仲は変わらない。
 やがて、ケトンは宣祖の目にとまり、<聖恩(お手つき)>となり、<尚宮>の地位につく。

 キム尚宮ケシとなったケトン。いかにも策士風、イ・ヨンエの演技力がいい。
 他方、ウォンピヨは、ムブル和尚から武術を習い、どうしてもケトンを忘れられず、
 やがて彼女を守るために、<去勢>して内官になってしまう。
 成人したウォンピヨ :キム・ボソン。
 宣祖は新しい王妃を迎える。このインモク王妃こそ、かつて僧院で出会ったウナだった。
 インモク王妃 :イ・ボヒ。 イ・ヨンエよりちょっと年齢差がありすぎかな。
         *ドラマ「チャン・ヒビン」ではオクチョンの母、
         「広開土太王」でもタムドクの母役。ケトン同じ日・同じ時刻生まれたとは。
 正室のインモク王妃に王子が産まれると、光海君の世継ぎの地位は危うい。
 ケトンは宣祖の側に仕える尚宮となり、王の近くで、光海君のために情報を収集したり、
 宣祖に何かと光海君が有利になることを吹き込む。
  *)「王の女」のパク・ソニョンは宣祖の寵愛を一身に受けるが、
    このドラマでは<一夜限り>らしい。
    イ・ヨンエよりもパク・ソニョンの方が可愛らしすぎて、
    <策士らしさ>はイ・ヨンエが上かな?
 宣祖と
 宣祖の死は、このドラマではキム尚宮ケシがヒ素を<薬食>に混入したと疑われる。
 ドラマ「王の女」では、中風に悪い<薬飯>を食べさせたことになっているが。
 さて、光海君が王座に就く。
 これ以降の物語の進行は「王の女」とほぼ同様らしい。
 大きな違いがあれば、相違点を挙げてみよう。
 このドラマの最終話を見終わって、2つ挙げておこう。
 ①明と後金(清)に対する中立政策。
  「王の女」は余り触れていないが、このドラマでは大きく取り上げている。
  光海君(クアンへグン)は後金の実力を評価し、<国書>を送ろうとするが、
  重臣たちの反対、特に腹心のイ・イチョムも反対するために断念する。
  しかし、光海君は、明と後金の戦いで明の援軍要請を断れず、軍を派遣するが、
  指揮官に<密命>を出す。明の敗北が明らかなら兵の無駄死を避け、投降して良いと。
  *当時の朝鮮では、明を宗主国としていて、後金は国家として認めていない。
   現代では、光海君の中立政策を評価してるようだ。
 光海君関係へのリンク
 ②キム尚宮(ケトン)の呆気ない最後。
  ドラマの最終話の初めに、反乱軍の矢で射られ、ウォンピョととも死んでしまう。
  ウォンピョはケトン守るために去勢して内官になったが、
  やがて、幽閉されたインモク王妃(大妃となっている)への同情と、ケトンの悪評から
  宮廷を去り、いつしか反対派に参加してる。
  反乱軍が宮殿に侵入、その一員のウォンピョはケトンを探し、
  ケトンが矢で射られる寸前ケトンをかばい射られ、
  ケトンも次の矢で射られ、二人とも死んでしまう。
  
  この呆気ないキム尚宮(ケトン)の死は、
  このドラマの主人公がキム尚宮と思っていた私には意外な印象だった。
  よく考えてみると、ドラマの題名は「西宮」だった(副題が「宮廷女官キム尚宮」と)。
  <西宮>とはインモク大妃の幽閉された狭い宮殿で、インモク大妃の呼称でもある。
  ドラマでは、イ・ヨンエのキム尚宮の悪役振りが目立つが、
  同日・同時刻に産まれた<ケトンとウナ>の物語だと理解すれば、納得できる。
  クーデター成功後のインモク大妃の述懐もうなづける。
  「私の10年間の幽閉の苦難に比べて、キム尚宮の栄華のさなかの死、どちらが幸せか」
 ところで、余談になるが、時代劇ドラマの俳優たちは、名脇役の人ほどあちこち出演している。
 <例>
 イム・ヒョクは、このドラマでは反光海君派の領議政役。
 彼は、「王の女」ではキム尚宮と連携する策士、イ・イチョム役。
 さらにドラマ「テ・ジョヨン」では、テジョヨンの父親役。
 このドラマのイ・イチョム役はソ・インソク。彼はドラマ「ワンゴン」では後百済王役。
 イム・ヒョク、ソ・インソク、二人とも、風格ある名脇役だ。