「きらめく星座」
劇団「こまつ座」公演
・・町田演劇鑑賞会 3月24日、於・町田市民ホール
幕を上げた舞台には防毒面をかぶった人物たち、
最後の舞台上にも防毒面をかぶった登場人物たち、
防毒面
戦争前夜の日本の庶民の生活を象徴する
(今日でいえば、新型コロナウイルスによるオーバーシュートと重ね合わせるのは私だけだろうか)。
井上ひさし作(栗山民也演出)のこの音楽劇は、
<軽妙さ(コミカル)と厳粛さ(シリアス)>を交互に織りなして進行する。
小説などの井上作品は、私の想像を遙かに超える発想に満ちているが、
この劇も同様で、休憩はさみ3時間余り次々と想定外の舞台が展開されて飽きさせない。
浅草の「オデオン堂」というレコード店の小笠原一家4人と間借り人2人が中心、
音楽好きで朗らかな人たちに戦争の影が及ぶ。
<非国民の家>から<美談の家>へ。
息子の正一(高橋光臣)が砲兵隊を脱走し憲兵に追われる一方で、
可憐な娘みさを(瀬戸さおり)が傷痍軍人(粟野史浩)と結婚する。
音楽好きの正一はとどろく砲声に心を砕かれて脱走し、いろんな変装により逃走中。
愛国乙女になったみさをは多くの傷痍軍人と文通してるが、
なんと返信の中から無作為に一通選び源次郎(粟野史浩)を婿にする。
写真左から、源次郎~ふじ~信吉~みさを~竹田~正一。右端は権藤三郎(木村靖司)
正一を捕まえようと、憲兵伍長の権藤がオデオン堂に引っ越してくる。
逃走中でマドロス姿の正一とあやうく出くわすシーン。驚きあわてる様子。
配役も好対照、みさをは小柄で細身、源次郎は大柄でいかつい。
店主の信吉(久保酎吉)は初老、後妻のふじ(松岡依都美)は歌手で信吉より大柄で若い。
ふじがレコードを持ってオデオン堂に来た時、二人は何故か惹かれ合って結婚。
人物たちの動作・仕草も好対照。<静と動>
舞台の人物たちがそれぞれの仕草で、数分間じっと動かない。
次いで、歌とダンスでにぎやかにリズミカルに動きまわる。
そして動きの合間に、一斉に<見得を切る>(歌舞伎のように)。
私は舞台上の<静と動>、<見得を切る>を観て、演出の妙、<様式美>さえ感じた。
登場人物は10人、それぞれ役柄にマッチした演技。
特に主演の松岡依都美(ふじ役))、一家を支える役柄の包容力を見事に演じ、素晴らしい。
キャスト及び松岡依都美(ふじ役)と瀬戸さおり(みさを役)
娘みさをが前途を悲観してお腹の子を始末しようとするシーンでは、
広告作りの竹田慶介(大鷹明良)が「人間}の文案<いのち奇跡>をもって諭す言葉は、
迫り来る戦争に対する井上ひさしのメッセージと思う(今日のコロナにもあてはまる)。
いのち奇跡ほか
*コロナで劇場の上演中止もある昨今、鑑賞会による市民ホール上演を観ることできた。
しかも、自由席となって一番前の座席で観た!
ついでに、井上ひさし作「父と暮らせば」を紹介する。
この劇は<二人芝居>、宮沢りえ主演で映画になった。私は映画しか見ていないけれど。
「父と暮らせば」