トップ

 縄文の旅1へ戻る

  縄文人のゲノム解読



 ある友人が、以前、縄文人のゲノム解析のニュースを見たよと、
 知らせてくれた。
 ちょうど、現代日本人のルーツとして縄文人が存在するから、
 それをもうちょっと詳しく知ろうとしていたところだった。

 縄文人を源流として、大陸から日本列島に渡来した弥生人との混血により、
 現代日本人の祖先が誕生しただろうと考えていた。
 また、北海道のアイヌ人は縄文人と直接つながるのではないかと。
 文化史的には、縄文文化から弥生文化、そして日本文化へと。
 他方、縄文文化から枝分かれして北海道は<続縄文文化>へ、
 次いでアイヌ文化となったようだ。

 そこに、縄文人のゲノム解析がすでに行われていたことを知り、ネットで調べた。
 私は文系なので理系は苦手だけど、
 とりあえず、ゲノムの知識を仕入れてみると、
 ゲノムとは遺伝情報で、ヒト一人あたりゲノムは<約30億塩基対>あるという。
 細胞内の<核DNA>からこのゲノム(遺伝情報)を抽出し、
 解析・解読するのだという。
 気の遠くなるような話だが、
 現在、<パーソナルゲノム>も解析・解読できるという。
 (1000ドル出せば解析できるらしい)


 2019年に、縄文人のゲノムを完全解読したという。
 北海道礼文島の「船泊遺跡」から
 98年に出土した「23号人骨(女性)」、縄文後期の人骨。

 

 上の写真の右側、赤い矢印の大臼歯からゲノムを抽出した。


 出土した人骨が何故<女性>と分かるのか、
 どうやらミトコンドリアDNAが関係するらしい。
 このミトコンドリアDNAは女性の細胞内で存続するという。
 ずっと以前、ミトコンドリアに関連するミステリー小説を読んだ覚えがあり、
 <ミトコンドリア・イブ>ついて曖昧な記憶があった。
  注)瀬名秀明「パラサイトイブ」だった。ミトコンドリアのSF小説。

 ミトコンドリアDNAは女性の細胞内で存続するので、
 母方を遡っていけば<ミトコンドリア・イブ>にたどり着くようだ。
 男の場合ならば、女性にないY染色体で、
 父方を遡れば<Y染色体・アダム>に行き着くらしい。


 話はそれてしまったが、
 船泊遺跡の女性人骨の研究は、その大臼歯のミトコンドリアDNAから始まり、
 <核DNA>の抽出に成功し、解読した。

 そして彼女の顔も復元され、
 肌の色は濃いめでしみができやすく。髪の毛は細くて巻きぎみ、
 そして目の虹彩の色は茶か黒という。
 それに、耳あかは湿ったタイプで、血液型はRh+。

 


 また、彼女の体質は、アルコールやアルデヒドの分解酵素が活性型で、
 お酒に強い体質とか、
 CPT1A(カルニチンバルトイル基転移酵素)欠損症とか。

 特に、注目されたのは、
この欠損症で、
 エスキモーやイヌイットなどの極北の地で
 アザラシなど海獣類を対象に狩猟生活を送ってきた人たちの中に、
 この変異が高頻度に見られ、
 高脂肪食を摂る人々の集団ではこの変異が有利に働くようだという。
 欠損症がむしろプラスに働く。

 船泊遺跡の人たちが海獣類を多く食べていた考古学的証拠と整合性があり、
 考古遺物(人骨)とそのゲノムのデータが一致した、
 おそらく<初めての例>という。

 



 さて、縄文人と現代日本人のゲノム解析から、
 分かったことは、本土日本人(東京在住者)の約10%が縄文人に由来し、
 北海道アイヌ民族の人々は7割くらい。
 そして、琉球の人々は3割くらいで、
 従来の形態的な特徴とほぼ一致したという。

 ほぼ予想通りの結果で、
 日本列島には大陸から渡来した弥生人、
 さらにはその後も続々と渡来人がやって来たため、
 本土日本人とアイヌ人の<ゲノムの差>ができあがったのだろう。


 ところで、北海道礼文島という
 北端の地の人骨のゲノム解析から分かったことが、
 東北地方に広がった縄文人に当てはまるのかとの疑問もあるが、
 例の欠損症を除いて違いはないようだ。

 また、大陸北方沿岸部から縄文人は日本列島にやって来たらしい。
 このことは、私の<縄文の旅>の三内丸山遺跡の人口について、
 「天声人語」からの引用文とも一致する。
 「縄文時代の晩期、日本の人口は7万5800人。
  うち東北には実に52%が暮らした。
  鬼頭宏著『人口から読む日本の歴史』によれば、
  関東や近畿、九州よりもはるかに多かったという。」
 注)上記の数値からすると、東北には約3万9400人。


 以上。
 さて、パーソナルゲノム解析もできるというから、
 1000ドル、約11万円出して、
 自分のゲノムを知るのも一興かもしれない。
 <Y染色体・アダム>にたどり着いたり、
 縄文人と自分のゲノムを比較してみようかな。


 <参考
 朝日新聞「論座」、米山正寛氏による。



 トップに戻る