トップ

 文末
  ある大学生の<寄稿>ヘリンク


 特集2 パレスチナ

 前書き
 特集1『2001年9月11日』
 2001年11月18日付けで終わった。

 緊迫したアフガニスタン情勢と同時進行して、
 パレスチナが再燃していた

 このパレスチナ問題は、
 オサマ・ビンラディン
 彼の反米声明で常にあげていたものだ。
 パレスティナの<子供たちの死>は
 イスラエルの行動を容認する米国の責任だ、と。

 2002年4月2日現在、
 イスラエル軍は
 パレスティナ自治区への占領を激化させ、
 自治政府議長アラファト(PLO議長)の執務室を
 包囲、アラファトを監禁状態においている。
 混迷を深めたパレスティナ情勢はどうなるのだろうか?


 第1報  2002年4月2日

 今日、NHK第1衛星放送で
 米国ニュースを偶然みたところ、
 パレスティナ問題が取り上げられていて、
 ニクソン大統領時代の
 <電撃的な米中国交回復の演出者
 元米国務長官キッシンジャー氏と、
 元国家安全保障担当補佐官のブレジンスキー氏の
 討論番組をやっていた。

 ブレジンスキー氏は明確に、
 イスラエル・シャロン首相の狙いが、
 93年の「オスロ合意」を破棄することにある、とする。
 米国の和平への取り組みは、
 アラファト議長を追いつめる
 現在のイスラエル政府のやり方ではなく、
 まず交渉のテーブルに双方を着かせること、という。

 これに対して、
 ユダヤ系であるキッシンジャー氏は、
 イスラエル寄りの姿勢で、
 アラファト議長及びアラブ諸国が
 パレスティナの自爆テロを明確に
 <テロとして非難する>、
 テロと手を切ることがない限り、交渉はできない、という。
 両氏の考え方に大きな開きがあるが、
 米政府はどうするのだろうか。


 現在、シャロン首相は、
 自爆テロを容認するアラファトは
 「敵だ。交渉相手にしない」と明言している。
 アラファトに代わる交渉相手はいるのだろうか。
 議長府を占領し、
 アラファトの執務室のある3階部分を包囲、
 電気を止め食料を絶ち、
 アラファト議長の外部との連絡手段は
 携帯電話だけという監禁状態においている。
 アラファトの護衛との散発的な銃撃もおこるというが、
 まさにアラファトの命は風前の灯火。

 シャロンが彼の<殺害>まで考えていないかどうか、
 もしこの状態でアラファトが死亡した場合、
 シャロンは「事故」と片づけることもできる。
 このことをブレジンスキーもにおわした。
 もし、アラファトが(「事故」?であっても)死亡したら、
 彼はパレスティナ及び全アラブの殉教者となる。
 そうなったら、パレスティナ和平は破綻し
 米国にとっても憂慮すべき事態が生じる、とブレジンスキー。

 米政府は、イスラエルの軍事行動の自制を求めながら、
 依然として、イスラエルよりの姿勢を取っている。
 自爆テロに対抗する軍事行動として
 「やりすぎ」ということがあっても、
 それを容認しているようだ。

 イスラエル・シャロン首相の強硬方針は、
 『9月11日』以来、
 ブッシュjr大統領の「テロとの戦争」宣言によって
 正当化されている。
 ビンラディン一派の「航空機自爆テロ」も
 パレスティナ民衆の「自爆テロ」も、テロに変わりなく、
 米国とともにテロリストを撲滅するために
 イスラエルは戦っているのだ、ということ。
 ブッシュjr大統領としては
 「うん、そうだ」としか言えないだろう。


 「自爆テロ」はかつてのベトナム戦争でも
 ベトコンによって遂行されていた。
 ベトナム戦争では、
 抗議のための焼身自殺(仏教僧など)もあった。
 今やパレスティナでは
 「自爆テロ」が唯一の可能なゲリラ戦術
 なってしまったのか。
 パレスティナ民衆の「インティファーダ」といえば、
 かつては、パレスティナ人群衆が
 イスラエル軍に投石や火炎ビンを投げて
 対抗するぐらいのものであった。
 (イスラエル政府そのころは自制が効いていた?)

 つい最近も17歳の少女が、
 (女性ゲリラとして訓練を受けた子ではないらしい)
 「自爆テロ」を敢行した。
 少女さえも自爆テロにはしる
 パレスティ民衆の心理状態は、かなり重症。


 他方で、イスラエル国内では反戦感情が高まり、
 占領政策に反対するデモ行進も行われたという。
 ユダヤ民衆の間にも自国政府の軍事行動に疑問がおきているようだ。
 18歳になるとイスラエルでは<徴兵>があり、
 徴兵拒否した若者について、
 日本でテレビ番組の報道があった。
 パレスティナ人とユダヤ人との共存を望むその若者は、
 占領地での軍事行動に反対して徴兵拒否、
 軍刑務所に送致されたという。
 (ただ、かつての日本のように
  ファナティックな非国民扱いではないようだ)
 また、実際に兵役に就いている将校・兵士の間でも、
 占領地での軍事行動は
 国家防衛の正当な軍務ではないとして、
 <軍務拒否>の動きが報じられている。

 イスラエルとパレスティナの真の和平は、
 指導者間の和平ばかりではなく、
 こうした民衆段階の和平により実現されるのではないか。
 そのためには、
 占領地での野蛮なイスラエル軍の行動の即時停止と
 自治区からの撤退
 まず行われなければならないのではないか。


 現在の状況(「毎日新聞」情報)
 新聞報道による現在の状況では、
 ヨルダン川西岸のパレスティナ自治区へのイスラエル軍の侵攻は、
 ラマラ(自治政府所在)、カルキリアベツレヘムベイトジャラ
 そして、トゥカレムの5カ所(及びその近郊)、500名を拘束した。
 ベツレヘムでは、イエス・キリストにゆかりある<聖誕教会>に近づいたという。
 イスラエル軍はラマラを攻略(既述のように議長府を破壊占領、アラファト議長を監禁状態)、
 近郊の西岸自治警察本部を包囲・砲撃(占領は時間の問題か)している。

 イスラエル・シャロン首相は「戦争状態」を宣言しており、
 他方、パレスティナ過激派組織、「ハマス」や「アルアクサ殉教者団」も自爆テロを続行、
 全面戦争の危機となっている。


 パレスティナ組織の共同闘争
 パレスティナ解放人民戦線(PFLP)のダマスカス本部代表によれば、
 「パレスティナ人の危機感は極度に高まっている。
 イスラエル人に対する敵意はかつてないほど強く」、
 今回のイスラエル軍の攻撃で、
 一般のパレスティナ人でも<彼らを殺したい>と考えるほどだ、という。

 アラブ有力紙によれば、3月28日のイスラエル軍のラマラ侵攻直後、
 13のパレスティナ人組織が自治区ガザで会合し、闘争強化で一致したという。

 また、レバノン南部を拠点とするイスラム教シーア派民兵組織「ヒズボラ」
 パレスティナと連携、動き出したようだ。
 レバノン領内からイスラエル北部、キリヤトシェモナ付近に、
 カチューシャ・ロケット砲弾数発が撃ち込まれた。
 2000年5月、イスラエル軍が南部レバノンから撤退以降初めてという。

 ヒズボラは、1982年のイスラエル軍による南部レバノン侵攻以後抗戦を続け、
 イスラエル軍を追放(撤退)したという自負を持っている。
 「ヒズボラはイスラエルが無敵ではないことを証明した」と誇る。
 ヒズボラ政治部門幹部のヌール・エルディン師は、
 「パレスティナ人組織が攻勢に出ている現在の状況は、
 かつてのレバノン南部に似ている」と語っているようだ。
 いよいよ始まったのか。ブレジンスキー氏も、たしかレバノンの「失敗」を例に出していた。
 
 <反イスラエル組織>
 *ヒズボラ  
  アラビア語「神の党」。党首 ハッサン・ナスララ師。
   イスラム教シーア派民兵組織。イランの同名組織の影響下にあるという。
   82年イスラエルのレバノン侵攻直後に設立。
   83年、在ベイルート米大使館爆破事件に関与。
   福祉・教育に力を入れ住民の支持を広げて、
   レバノン内戦(75〜90年)後の92年総選挙で14議席獲得、
   レバノン内政にも影響力確保。
   対イスラエル闘争ではロケット弾による越境攻撃でイスラエル兵の犠牲続出し、
   99年7月、バラク・イスラエル首相が「レバノン南部からの1年以内撤退」を表明。
   その後、ヒズボラの攻撃強化により01年5月、前倒してイスラエル軍撤退。
   イスラエル軍に勝利した。
 
 *ハマス 
   エジプトの「ムスリム同胞団」を母胎に
   87年、ガザ地区で成立したイスラム原理主義組織。
   イスラエルとの和平に反対。
   他方で、教育・福祉、医療活動で貧困層や難民に浸透している。

 *アルアクサ殉教者団
   パレスティナ解放機構(PLO)主流派「ファタハ」の軍事部門。
   (アラファト議長支持母体)
   今年1月、幹部が暗殺され停戦破棄を表明し、自爆テロ戦術にはしる。
   原理主義組織の「イスラム聖戦」とも協力か。


 以上の情勢から
 私はイスラエル軍の野蛮な軍事行動はおそらく挫折すると思う
 イスラエル軍の圧倒的な軍事力の前に風前の灯火と思われるパレスティナ民衆の声は、
 せいぜい机上の評論家ぐらいの私などにも届いているのだから、
 もっと行動的な人々に伝播しているはず。

 私が驚いたのは、パレスティナ民衆の死傷者数が
 『9月11日』よりも多少かどうかというよりも、
 過激派メンバーを捕捉するという理由で侵攻した町や村で、
 イスラエル軍が民家を砲撃し壁を破り、一軒一軒を破壊していること。

 戦争映画の市街戦では、建物の角で敵の狙撃をかわしつつ前進する兵士の姿が描かれる。
 現今のイスラエル軍の市街戦とは、街角での敵の狙撃をかわすため民家の壁を砲撃して侵入、
 かくして民家に侵入・破壊するという盗賊まがいの様子。
 これでは、イスラエル軍の侵攻は、町や村全体の建物を破壊し尽くすことになる

 少しでも想像力のある人ならば、
 理不尽にも「家という生活の基盤」を破壊された
 パレスティナ民衆の怒りがいかほど強いか分かる。
 イスラエル軍の<蛮行>に誰が黙っていられようか。



 第2報 2002年5月6日
 第1報から1ヶ月以上経ってしまった。
 この1ヶ月の間に起こった経過から、
 風前の灯火であったアラファト議長は解放されることになった。
 聖誕教会の攻防は政治決着がはかられている。

 以上のように、イスラエル軍の西岸自治区からの撤退になった。
 (ことが起こればいつでも侵攻するという態勢を維持しながら)
 国際世論の圧力と米国の直接的な圧力を受けて、
 (ブッシュjrにとっては、言うことをきかないシャロン首相にはこの間イライラしていただろう)
 強硬派シャロンとしても、この際退いておいた方が良いと判断したのだろう。

 しかし、イスラエル軍の撤退(全面ではない)後、大きな傷跡が残っている。
 まず、第1報で記したように、イスラエル軍の破壊作戦は徹底していて、
 テロリストやテロ組織の壊滅(つまり、殺害・捕虜)を口実にした破壊は、
 人家ばかりか自治政府諸機関の破壊を目的にしていたこと。
 これは「オスロ合意」以降のパレスティナ和平の積み上げられてきた諸段階を、
 一挙に破壊する結果となった。
 これは国家によるテロリズム以外の何ものでもない

 イスラエル国家とパレスティナ自治政府との力関係では、
 軍事力・政府組織、経済力など圧倒的なイスラエルの優位。
 イスラエルにとって「赤子の手をひねる」ようなものだ。
 自治政府の基盤(インフラ)を破壊するシャロンの強硬作戦(蛮行)は、
 パレスティナ民衆の怒りを<逆なでする成果>しかない。
 ますます、残された唯一の?抵抗手段として「自爆テロ」が起こる要因となるだろう。



 第3報 2002年5月11日
 今朝の新聞報道によると、聖誕教会の攻防に政治決着がつき、
 イスラエルからテロ容疑者とされた13人は、キプロス経由で各国に<追放>、
 その他のパレスティナ人や諸外国の平和団体メンバーが解放されるたようだ。

 聖誕教会といえば、イエス・キリストの生誕を記念した?ベツレヘムのキリスト教聖地であろう。
 ユダヤ・イスラエルイスラム・パレスティナの攻防が、 
 キリスト教聖地で行われたという、奇妙な因縁がある。

 この攻防がこれほど長引き、キリスト教・欧米諸国の神経を逆なですることにもなったのは、
 イスラエル・シャロン首相の強硬策と米国・ブッシュjr大統領をはじめとした
 欧米キリスト教諸国の圧力との駆け引きを暗示している。
 おそらく、聖誕教会がキリスト教教会・聖地でなければ、
 シャロンは一気に教会を破壊し、テロ容疑者ばかりでなく立て籠もる人々の死を容認したことだろう。
 (欧米の平和団体メンバーがいたとしても)

 他方、シャロンは「ガザ地区」侵攻作戦をすでに立てているという。
 ガザ地区を拠点とするハマスの壊滅を狙う作戦らしい。
 この作戦でも、おそらく、西岸地区と同様ガザ地区の基盤(インフラ)の破壊となるだろう。
 ハマスも徹底抗戦を準備しているという。
 現在のイスラエル国家・政府は、また、このような蛮行に等しいシャロンの強硬作戦を支持する
 多くのイスラエル国民は、どういう心理にあるのだろうか。
 イスラエル国家の生存を脅かす強力な勢力がどこかにある、というのだろうか。


 私の特集2を読んだある大学生から
 パレスティナ問題のレポートを受け取った。
 <インティファーダ>についての考察。

 レポートへのリンク


 トップへ戻る