江戸かな文字
・・・下記著書を参考に。
江戸時代の浮世絵の詞書や書入れを読むには、当時のかな文字を知らなくてはと。
しかし、古文書学にも無知な私が、片手間に覚えることもできない。
参考書を調べたら、車浮代著「春画で学ぶ 江戸かな入門」があった。
やっぱり、手っ取り早く、春画で<江戸のかな>を読もうとする人が多いらしい。
しかし~、とても片手間では無理なことが分かった。
とりあえず、画像を入れてみよう。
渓斎英泉の「地色早指南」から。
下の画像の題は「新玉門の娘」で、<ふりがな>は「新玉門」で<あらはち>になる。
かな3文字目が<は>となるのだ。同様に、娘」の2文字目が<す>。
<は>は漢字<者>のくずし字(省略字)で、同じく<す>は漢字<春>から。
こうして、この表題ならば「新玉門の娘」=<生娘>ですぐに想像でき、
娘の絵も、色気づいた娘の<艶なる表情>が良く描かれている。
しかし下の文章になると、所々分かるが、完全にはとても読解できない。
やはり、脇に参考書を置いて、読み進まなければ、という次第。
文章の大意は、男女とも初めから交合ばかりでは<快美>も得られない。
色欲だけでは精を費やし、やがて病身になってしまう。
1日に<春三夏六秋二無冬>が良い。ただ、行い方違えれば毒になる。
*江戸人は1日にそんなに。今みたいにエンタメが無かったからか。
次の画像は、「艶盛上味の婦」。ふりがなは「いろざかり志やうあぢ をんな」
<か>=<可>、<志>=<し>、<な>=<奈>から。
なお、くずし字の<志>は<し>として他でも多用されている。
上の画像では、14歳から16歳のこと。
ここでは17・8歳から22・3歳で、色気たっぷりな女となる。
文章の一行目中程から「艶情盛にしていまだ、上味にハ至るべからず」とある。
*引用文中の太字が江戸かな。また、<艶情>は<いろけ>、<盛>は<さかり>。
(まだ若いので)<よがり薬>や<喜悦の具>を使うな、「ゆびにてくじるハ大きによし」と。
それからいろいろ指で愛撫する良さを述べ、後ろ3行目上で「りんびやう」(淋病)に気をつけろと。
後ろ2行目「心のまゝにたのしむべき血気さかんのころなれバ玉茎の限り交接てよし」
心、血気、<な>も何とか読めそう。<れ>は読めそうもない。
<玉茎>は<まら>、<交接>は<とぼし>、<ま>や<とぼ>も読めそうもないか。
さらに、<年増女>についても英泉が描いている。
江戸時代には、24・5歳を過ぎると<中年増>、30歳過ぎには<大年増>というようだ。
図1の表題は「交接盛中年増」、かなで「とぼしざかりちうどしま」。
中年増ともなれば、薬や性具を使って良く、
「俗に曰湯玉門酒玉茎」<ぞくにいふゆぼゝさかまら>が良い。*今でも諺になってるぞ。
男は漏らさず、婦はたびたび達して、長く楽しむこと専一。
年増1図
図2の表題「本味上玉門年増」、かな「ほんあぢじやうぼゝのとしま」。
26・7歳から34・5歳が<本味>、最も良い性愛の時だという。
終わりの4行目下、「交接方熟練して広玉戸もせまくせまきもひろく
自在になり所謂交合上手といハるゝハこの本味の時をいふなり」
<玉戸>=玉門、ぼぼ。<交合>=交接、ここでは<交合上手>で<させじやうず>。
年増2図
次に、勝川春潮「好色図会十二候」を観てみよう。
勝川春潮へのリンク
また、鳥居清長「色道十二番」を観てみよう。
<番>は、二人、要するに<つがい>と読む。
鳥居清長へのリンク
さらに、歌川豊国「絵本開中鏡」のうち三枚の図を観てみよう。
歌川豊国へのリンク