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    勝本~聖母宮~猿岩~一支国博物館~王都復元公園
    ~ホテル~春一番~壱岐神楽~ホテル
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     聖母宮 猿岩 一支国博物館 
     王都復元公園(原の辻遺跡) 壱岐神楽


 第三日目 4月17日(日)
 予定通り早朝にホテルを出発、バスで対馬厳原港に向かう。
 ジェットフォイルで壱岐の芦辺港に1時間余りで着くという。

 ジェットフォイルとは、私は初めてその名を聞き、乗船する。
 <海を飛ぶ>というこの船には、水中に回転翼のエンジンがあって、
 その揚力で船体を海面上に浮かせて走る高速旅客船のようだ。
 津島・壱岐間の70Kmを1時間余りだから、分かりやすく時速70キロになる。
 港の出入りの際のエンジン全開以前を考慮すれば、時速70キロ以上だろうか。
 対馬や壱岐では福岡・博多へ日帰りで買い物に行くというのもうなずける。

 ここで、バスガイドの岩佐さんと別れる。
 彼女は対馬観光の話ばかりでなく、個人的な趣味の話など気さくに語り、
 対馬の人々の日常をうかがわせてくれた。
 彼女いわく、ある日の夕飯のおかずの中には
 <水辺や山で採ったもの>もあります、とか。

 ジェットフォイル「ヴィーナス号」(見た目には小型フェリーのよう)で、
 厳原港を6時45分出発、芦辺港に7時50分に着く。
 今日は快晴、浪静か。
 シートベルトを付けてるが船の揺れもなく、船内で朝食を済ませる。

 芦辺港からバスで壱岐北端の「勝本」へ。
 バスガイドは富永さん、30歳代のすらりとした色白の美人。
 壱岐の島は、すり鉢を伏せたような形で山も高くなく、
 山がちな対馬の島と真逆な地勢で、
 面積も<二十四の瞳>の「小豆島」とほぼ同じという。

 富永さんに(別の時だったが)、壱岐と対馬の交流について尋ねたところ、
 近い島だけれどそれほどないと言う。
 島の人たちは買い物など便利な博多に行くらしい。
 山がちな対馬と比べれば、地勢も風土も違い、
 <近くても遠い仲なのか>とも思う。


 勝本は、昔は捕鯨で栄えた漁港という。今は近隣の人たちによる朝市が立つ。
 昨年、<能登の旅>で見学した<輪島の朝市>を私は思い浮かべていたが、
 規模もごく小さく閑散としていた。
 トイレ休憩も兼ねて朝市があるので立ち寄ったのか、
 私にとっては観光案内所や漁港を見ながら一服できたのが幸いと。


 聖母宮

 次いで、近くの「聖母宮」に向かう。
 <聖母>というからキリシタン関連かなとなるが、<しょうも>と読み、
 実は神功皇后の<三韓征伐>に由来し、皇后を<聖母様>として祀っている神社だった。
 <勝本>という地名も勝利を記念して皇后が名付けたという。
 聖母宮では、折良く宮司さんが居合わせていて、
 直接、神社の由来などを丁寧に説明し、社殿の中も案内してくれた。
 また、壱岐の神社の数が多くて、宮司さんたちは幾つかの神社の宮司を兼ねているという。
 わがツアーが<壱岐神楽>を夕方に鑑賞すると知ると、
 宮司さん自身が壱岐神楽の<舞い手です、また会いましょう>と。

 対馬の厳原八幡宮神社も<三韓征伐>と関連していたし、
 壱岐と対馬には神功皇后ゆかりの伝承があり、
 また、朝鮮半島に関連した共通の歴史的出来事としては、秀吉の朝鮮出兵や元寇が想起される。


 猿岩

 聖母宮から島の西岸、黒崎半島の「猿岩」に向かう。
 なるほど、半島から突き出た猿岩は<そっぽを向いた猿>そっくりだ。
 しかも全く手を加えていないというから、自然の奇観といえる。

 この猿岩の近くの小高い丘に「黒崎砲台跡」がある。
 大西巨人作「神聖喜劇」の主人公・東堂太郎は
 戦時、教育召集兵として対馬に渡り、砲手として訓練を受ける。
 対馬は島の海岸沿いに多くの砲台があり(島全体が<要塞化>していた)、
 今日では、好事家による<砲台跡巡り>もあるという。
 壱岐の島に他にあるか知らないけれど、黒崎砲台は対馬の砲台と連携して、
 対馬・壱岐間の70キロに敵艦船が侵入するのを防ぐのが目的だったという。
 (ただし、結局一度も使われなかったし、命中度はほとんど無いらしい)

 猿岩から昼食の食事処「うまめし」に向かうバスの車中から「猿岩」の正面を見ると、
 ただの岩(ただし<海蝕崖>だが)として見えた。
 昼食「うめしま」では<壱岐牛>を食する。
 ガイドさんによると、壱岐は古くから牛の原産地と知られていて、
 日本各地の<何々牛>が元はといえば壱岐牛に由来するのかも、という。
 バスの車中から時折牧草地で<のんびり過ごす>牛を見かけると、
 壱岐の温暖な気候の中で育つ牛なら<さもありなん>と思う。


 一支国博物館

 次いで、「一支国博物館」に向かう。
 「魏志倭人伝」に壱岐は「一大国」と記されているが、
 「隋書」などでは「一支(いき)国」とあり、現在では「一支国」に統一しているようだ。
 いずれにしても、この博物館は壱岐の歴史や遺跡、出土品などを紹介しているので、
 壱岐を知るためには必見の博物館と思う。
 「原(はる)の辻」遺跡で発掘された<人面石>も展示されていた。

 最初に館内2階のシアターに案内されて、映像と館員の説明を受け、
 次いで通史や古墳の展示ゾーンや王都としての「原の辻」を再現した大型模型などを見学、
 一支国の概要を理解することができた。さらに、4階の展望室では「原の辻遺跡」も遠望できる。
 しかも、黒川紀章さん設計の地下一階・地上4階のこの博物館には、
 展示室ばかりでなく多目的ホールなどもあり、
 我々のような観光客ばかりでなく家族連れもいて、市民の交流の場でもあるようだ。


 王都復元公園

 バスに乗車し、「王都復元公園」(原の辻遺跡)に向かう。
 現地ガイドの富さん(女性)に迎えられ、
 一支国の都と比定されるこの遺跡の中をガイドさんの案内で見学、
 昨年の旅行記「縄文の旅」で復元された竪穴式住居や高床式倉庫を見ていたので
 <デジャヴ>という感じがあった。
 けれども三内丸山遺跡は縄文の、ここは主に弥生(~古墳初期)の遺跡という違いがある。
 この遺跡は王都らしく大規模な環濠集落になっていて水稲農耕も行われていた。
 また、島外との通商を物語る船着き場跡があり、客を迎えた建物などもある。
 私が一番興味を惹かれたのは、
 祭祀のための区域の境には<結界としての鳥居>があり、
 その鳥居の上に二羽の鳥の彫像があったこと。
 文字どおりの<鳥居>で、神社に必ずある鳥居の原初のものかな、と思った。

 原の辻遺跡からホテルへ。
 今日は夕刻に「壱岐神楽」を見るので早めに3時半頃ホテルに到着。
 ホテルは「ビューホテル壱岐」、通りの向こうは郷ノ浦湾で、湾に面して細長く建っている。
 裏手は高台に公園があり、「春一番の塔」がある。

 私たちの部屋は5階の507号で、エレベーター降りて細長い通路を通り部屋に着く。
 この部屋からは港内しか見えず、港外の海の遠景は残念ながら見ることができない。
 時間があるのでホテル付近をカメラを持って散策することにした。
 防波堤までちょっと歩いたら、
 <春一番>の慰霊碑や高校美術部の生徒たちが描いた絵を見つけた。
 バスガイドさんはホテル裏手の塔は説明していたが、
 此処については言わなかったので、後でわが同居人に教えてあげた。

 <春一番>というと、春の訪れを告げる強い風、待ち望んでいた春が来ることで、
 (キャンディーズの歌「もうすぐ春ですね 恋をしませんか」というラブソングもある)
 気象用語にもなった。
 けれども壱岐では違う。
 実は、<春一>と言って、壱岐では、漁船を襲う強風と荒波を表す言葉で、
 警戒すべき風だった。
 そして、その犠牲となった郷ノ浦の漁師さんたち53名の慰霊碑が建てれた。
 とりあえず、此処が<春一番>という言葉の発祥の地となった。


 壱岐神楽

 バスで壱岐神楽の鑑賞する住吉神社に向かう。
 神社というと高台にあり、石段を<上る>というイメージが湧くが、
 意外に急坂を下って住吉神社に着いた。

 「壱岐神楽」は起源が室町時代に遡るという。
 それに。現職の宮司さんたち(今日は6人)が
 舞い奉じるの(壱岐から伝えられた「平戸神楽」とともに)珍しいという。
 それだけ、厳かな神楽の舞といえる。
 「聖母宮」でガイド役となった宮司さんも、生真面目な面持ちで舞い、
 笑顔でガイドしていた雰囲気と違う。
 演目は「二弓(にきゅう)」「篠(ささ)」{八咫烏(やたがらす)」、
 そして曲芸的な「折敷(おしき)」。

 <二弓>は弓と剣(つるぎ)を用いて舞い、災いを払う。
 <>は篠の葉の涼やかな音色(笛の音)に神の声を聴く。
 <八咫烏>は神武東征の際、神武を導いたという<三足の烏>
 (韓流ドラマにも出てくる)で、舞手はカラスの面をつけて舞う。

 <折敷>は手の平にお盆のような円形の折敷を載せ、
 両手を自在に動かして落とさずに舞い、
 途中、後ろにでんぐり返りながら折敷を操る。
 <よくもまあ落とさずに舞えるなぁ>と感心、
 淡々と演目をこなして舞う姿はお見事としか言い様がない。
  注1)折敷とは食器を載せるもので、お盆と違うようだ。
  注2)旅行後に知ったのだが、youtubeの「壱岐神楽」に「折敷」の映像があった。
   そして、この映像で舞い演じる人はなんと聖母宮の宮司さんだ。


 壱岐神楽の鑑賞を終えてホテルに帰着。
 夕食前に7階大浴場で入浴し、夕食の郷土料理を味わう。
 今夜は満月なので写真を撮るためにロビーの階に降りて、
 既に利用していた喫煙場所に行く。
 壱岐対馬のホテルはどこも館内に喫煙所を設けていないのか、
 このホテルもロビーの外に吸い殻入れを設置している。
 一服しながらとりあえず満月を撮った。
 
 明日でこの旅行も終わり、帰宅する。
 今まで巡ってきた観光地に思いをはせながら、荷造りをする。
 旅行社による宿泊ホテルからの<宅配無料サービス>を利用して、
 旅行用大型のキャリーバッグに土産物や衣類などできるだけ詰め込む。
 対馬の<蜂蜜>などの瓶詰めも入れたので、
 宅配用紙に内容として衣類やビンと書いたところ、
 ビンと書くと預けることができない、と宿の係の人から注意された。
 飛行機の貨物(宅空便)としてビンなどと書くと
 <危険物と見なされるのかも>と思いながら、
 ビンを削除(実際は入れてるが)して預けた。


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