浮世絵詞書
      ・・・下記の著者の読みごたえある著書を参考にした。感謝!


 太田記念美術館で月岡芳年の「血と妖艶」展を観た時、
 浮世絵に<詞書(ことばがき)>または<書き入れ>が多くあった。
 それらの浮世絵の由来や物語を表すと思うが、悲しいかな読めない。
 もちろん、展示では説明が付してあるが、後になると記憶が定かでない。

 そこで、詞書について書かれた本はないかと捜したところ、
 早川聞多著「現代語訳 春画」を見つけた。
 著者は浮世絵の詞書とその現代語訳を掲載。
 さらに、それらの説明や解説はとても丁寧で読みごたえある。

 春画もいい。
 詞書に何と書いてあるのか、江戸の町人と同じ目線で楽しめるかもしれない。

 もともと春画は、江戸時代には<枕絵>とか<笑い絵>と呼ばれていた。
 枕絵として、嫁入りする娘に親が持たせる例があったという。
 笑い絵とは、男女の性器が顔と同じぐらいの大きさであったり、
 あり得ないような体位で描かれたり、書入れには<洒落>があったりなど、
 <笑いを誘う>絵も多かったからのようだ。


 上記著書の内容は
 杉村治兵衛作「欠題組物」
 鈴木春信作「風流座敷八景」
 磯田湖龍斎作「風流十二季の栄花」
 喜多川歌麿作「ねがいの糸ぐち」
 葛飾北斎作「富久寿楚宇」

 <風流>とは<春画>のこと。
 鈴木春信には「座敷八景」もあり、風流で春画を表している。

 下は 杉村治兵衛「欠題組物」の第二図。絵の上に長い詞書がある。
 一応、フォトモーションのズームで拡大できるようにしたが。


 詞書の内容は、後家さんが一人息子を大事に育てる。息子は長じて色好みが昂じて病気になる。
 息子を案じた母親が美しい腰元を付ける。腰元が湯浴みするのを、
 「やりくらんとてそのまゝとらゑてはじめんとせしを、母はしばしとておしとめける」となる。


 次には鈴木春信
 春信には「風流座敷八景」と「座敷八景」があるので、どういうことかと
 そしてそもそも<八景>とは? これにも早川聞多氏が上記著書に記す。

 鈴木春信へのリンク


 磯田湖龍斎
 「風流十二季の栄花」    
 湖龍斎は鈴木春信の<画友>と称したらしい、この組物も春信のものに似ている。
 四季十二ヶ月にちなんで12の絵図を描き、狂句とともに、絵に書き入れている。

 磯田湖龍斎へのリンク

 喜多川歌麿
 「ねがひの糸ぐち」  
 浮世絵そして春画といえば、どうしても哥麿を見逃せない。
 しかし、この「ねがいの糸ぐち」の良い画像をまだ手に入れていない。
 それで、「四図」のみになってしまった。 これでは、せっかくの詞書が読めないなぁ。
  *その後、「ねがいの糸ぐち」の<全図>が見つかった。
   「歌満くら」からページへのリンクを付けた。

 

 「歌満くら」を観てみよう。

 歌満くらへのリンク :「ねがいの糸ぐち」へはここから入る。


 また、北斎の「富久寿楚宇」もあるが、残念ながら<書入れ>が読めるかどうか。
 北斎には書き入れのない「波千鳥」がある(「富久寿楚宇」が原本)。

 下、波千鳥の図(富久寿楚では二図) 二人はまだ若く、若衆と娘。
 富久寿楚宇の詞書によると、ちょっと淫らな会話になる。

 若衆「おさねさん、おまへとこうゆつくりするのハはじめてだのふ。
    せんどうちからたまりきつているから、がいきづめだわな」
 娘「わたしもね、おまへにあいたくつて~もう~どふもこたへられないんだから、
  やふ~の事でつがうしたわな。かならず~みすてておくれでないよ。
  ハア~スウ~フウ~」と。  
 若衆は、精がたまりきつて、気が行き過ぎてる。
 娘も、逢いたくてやっと都合つけてきた、見捨てないで。と

 


 とりあえず、「富久寿楚宇」の八図と十図を観てみよう。

 富久寿楚へのリンク